law日記

司法試験の法律7科目を気ままに勉強中✏️やりたいことが変わるし、多すぎて困る毎日を送る大学生。図書館通い人📚好きな本のジャンルはビジネス書、自己啓発本、法律関係本。またコロコロ気が変わりそうです😋

3枚のおふだと法律

今回は、3枚のおふだを法律の観点からみてみました!

 

3枚のおふだは、日本のおばけのお話です。

 

ある山のふもとのお寺に、和尚さんと小僧さんがいました。

季節は、秋でした。

和尚さんは、山を見上げていいました。

「小僧や、お天気がいいから、栗を拾いにいっておくれ。」

「でも、和尚さま。山奥には人を食う鬼婆が出るそうですよ。」

「そのときは、これを使いなさい。」

和尚さんは、小僧さんに3枚のおふだを渡しました。

 

おふだを胸に入れて、小僧さんは山を登っていきました。

サワっと風が吹く度に、ポトリポトリと栗が落ちてきます。

小僧さんは、栗をどんどん拾っていくうちに、山奥まで来てしまいました。

もう、夕方です。

 

「あそこに小屋があるぞ。すこし休ませてもらおう。」

小僧さんが、小屋の戸をたたくと、中からおばあさんが出てきました。

「もう日が暮れるから、ここに一晩お泊りなさい。」

おばあさんはにこにこしながら、小僧さんを招きいれてくれました。

そして、栗をたくさんゆでて、食べさせてくれました。

 

この時点で鬼婆に犯罪は成立するか?

のちのち小僧さんを食べるために、小僧さんを家に招き入れましたね。

なんだかヘンゼルとグレーテルに似ている気がします。

考えられるのは、誘惑による誘拐

 

いつから誘拐罪?

小僧さんが未成年なら、刑法224条の未成年者略取、誘拐罪が成立する。

この点、誘惑することは誘拐の手段である。手段が想定されているから、着手時期は手段の開始時点であり、既遂時期は、拐取者を自己または第三者の実力支配下に移した時点である。

このことから、おばあさんが小僧さんを家に招いた時点が誘拐罪の着手時期、小僧さんが家に入った時点が誘拐罪の既遂時期ではないかと考えられる。

ということで、もうこの時点で鬼婆に誘拐罪が成立すると考えられる。

 

真夜中のこと、ふと目が覚めた小僧さんの耳に、雨音が聞こえてきました。

タンツク トンツク 小僧さん 起きておばあの顔を見ろ

小僧さんはとび起きて、戸の隙間からそっとおばあさんを見てみました。

おばあさんの頭には、角が2本はえています。

口は耳まで裂けて、真っ赤な舌が、ベロりとのぞきました。

鬼婆は小僧さんを食べるために使う包丁を研いでいました。

小僧さんはブルブルと震えながら、心の中で叫びました。

「鬼婆だあ。」

 

この時点で鬼婆に殺人予備罪が成立する?

殺人罪は、人の生命を奪う重大な犯罪であるため、未遂犯、予備犯も処罰されます。

この時点で鬼婆は包丁を研いでいますね。小僧さんを食べるために研いでいるのです。

刑法201条 殺人予備罪

人を殺す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する。

殺人の実行の着手前でなければならず、すでに人の死を惹起しうる危険な行為を開始したときは、殺人未遂罪が成立する。

この時点では小僧さんを食うための包丁を用意しているだけなので、殺人予備罪が成立する。

 

小僧さんは勇気を出して、鬼婆のところへ行きました。

「おばあさん、便所に行きたいんだけど。」

「そこでしろ!」

さっきと違ってすごい声です。

「そんなこと、いやです。便所はどこですか?」

「やかましい小僧だ。」

鬼婆は、小僧さんの腰に縄を巻き付けて、便所に連れていきました。

 

鬼婆に逮捕及び監禁罪が成立しそう

刑法220条 逮捕及び監禁

不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。

個人の自由を制約する犯罪です。

本罪の保護対象は、身体の場所的移動の自由です。

小僧さんは鬼婆に縄で縛られており、行動の自由がないので身動きができず、逮捕されているといえます。また、逃げ出すことが不可能なように鬼婆が縄でつないでいるので、監禁されているともいえます。

 

「小僧、まだでないか?」

便所の外で、鬼婆が叫びます。

「まだです。」

小僧さんは、縄をほどいて、便所の柱に括りつけました。

そして、和尚さんにもらったおふだを1枚取り出して言いました。

「便所の神様。私のかわりに、返事をしてください。」

「小僧、まだか。」

鬼婆が聞くと、便所の神様が返事をします。

「まあだ、まだまだ。もうちょっと。」

いつまでも出てこない小僧さんに、しびれを切らした鬼婆は、思いっきり縄を引っ張りました。

ガラ ガラ ガラ...

便所が崩れて、鬼婆の額に、柱がゴーンとあたりました。

「小僧め、逃げたな!」

鬼婆は真っ赤になって、小僧さんを追いかけました。

 

その足の速いこと。

小僧さんは、今にも追いつかれそうになりました。

「大水よ、出ろ!」

そう言って、小僧さんは、2枚目のおふだを鬼婆に向かって投げました。

すると大きな川が、鬼婆の前に立ちはだかりました。

「なんの、これしき!」

鬼婆は、ジャブジャブと川を渡って、追いかけてきます。

 

小僧さんは、最後のおふだを出して叫びました。

「大火事よ、出ろ!」

鬼婆の前が、大火事となって、野原も山も火の海となりました。

フー、フー

それでも鬼婆は、火を吹き消しながら追いかけてきます。

 

小僧さんに罪は成立する?

鬼婆を結構酷い目にあわせたり、山に大火事を起こしたり...。

やりすぎ?なのか…?

刑法36条 正当防衛

急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。

ここでは、小僧さんはこうでもしないと、即座に鬼婆に食べられてしまいます。

なので、急迫不正の侵害がある。自分を守るためにしたやむをえない行動ですので、正当防衛が成り立つといえます。

 

小僧さんはやっとのことでお寺につきました。

「和尚様、助けてください。鬼婆が追いかけてきます。」

「では、この中に入りなさい。」

和尚さんは自分の衣をたくしあげて、小僧さんを隠しました。

「小僧はどこだ!」

お寺に入ってきた鬼婆が叫びました。

「まだ、山から帰ってこないぞ。」

和尚さんは、すました顔で餅を焼いています。

「うまそうな餅だな。小僧がいないなら、それをごちそうしておくれ。」

すると、和尚さんは笑って言いました。

「わしと化け比べをして、勝ったら餅をやろう。」

「よし、まかせとけ。」

和尚さんは、鬼婆に向かって言いました。

「大きくなあれ、大きくなあれ。」

鬼婆はみるみるうちに、おおきくなって天井に届きそうです。

「これは大変。わしまで食われてしまうぞ。」

和尚さんは急いで言い直しました。

「小さくなあれ、小さくなあれ。」

すると、鬼婆はどんどん小さくなっていきます。

「もっともっと小さくなあれ。」

鬼婆は、豆粒ほどになりました。

和尚さんは、その豆を箸でつまむと、餅にはさんで、パクリと食べてしまいましたとさ。

 

おしまい

 

鬼婆にたくさんの罪が成り立っていましたね。結局和尚さんに食べられてしまったのですが。

和尚さんに殺人罪は成立するのでしょうか。そもそも鬼婆が人じゃないし...。

小僧さんを防衛するためなので、正当防衛か。

色々考察すると面白いかもしれませんね。