おむすびころりんと法律
前回に引き続き、今回はおむすびころりんを法律の観点からみてみました!
ではみていきます。
昔、あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。
「おじいさん、はい、お弁当ですよ。おじいさんの大好きな、おむすびのお弁当ですよ。」
「おむすびかい。それはうれしいな。では、おばあさん、いってきますよ。」
「いってらっしゃい おじいさん。気を付けてね。」
おじいさんは、お弁当を持って、畑へ出かけました。
おじいさんは、畑でせっせと働きました。
「やれやれ、疲れた。ふー、暑い。お腹が空いてペコペコだ。さて、お弁当を食べようか。おばあさんが作ってくれた、おいしいおむすびのお弁当だぞ。」
おじいさんが、おむすびを食べようとしたときです。
おむすびが、ころっと手から落ちてしまいました。
おむすびは、ころりん ころりん ころりん と、転がっていきました。
「こらこら、おむすびや、待っておくれ。」
おじいさんは追いかけました。
#この時点でおむすびの所有権はおじいさんにある?
おじいさんの手からおむすびが離れていますね。
・民法206条 所有権
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
所有権は、モノを自由に使用、収益、処分することができる権利です。
このおむすびは、おばあさんに作ってもらい、おじいさんの手に渡り、食べることが許可されているので、所有権はおじいさんにありました。
しかし今はおじいさんの手から離れておじいさんの支配が及んでいません。
・民法180条 占有権
占有権は、自己のためにする意思を持って物を所持することによって取得する。
この条文と照らし合わせると、おじいさんの手からおむすびが離れているので、おむすびに対する事実上の支配がなく、占有とは言えません。
ただ、おじいさんはおむすびの所有権を破棄したわけではないので、所有権はありますが、占有権はないと、いったところでしょうか。
おむすびは動産なので、即時取得されてしまう可能性があります。
ころりん ころりん、すっとーん。
おむすびは、穴の中に落ちてしまいました。
すると、穴の中から歌が聞こえてきました。
おむすびころりん すっとんとん すっとんころりん とんとんとん
おじいさんはびっくりしました。
「誰が歌っているんだろう。もうひとつ落としてみよう。」
おむすびが穴の中に落ちると、おや、おや、おや、また歌が聞こえてきました。」
おむすびころりん すっとんとん ふたつもありがと とんとんとん
「これは面白い。もっと歌え、もっと歌え。」
おじいさんは喜んで、おむすびを全部穴に落としました。
#自ら落としたおむすびの所有権は?
おじいさんは残ったおむすびを自ら穴に落としましたね。
確かに最初のおむすびは、望んで落としたものではないので、占有権はなくとも、おじいさんに所有権があります。即時取得さえされなければ、おじいさんは所有権を根拠に返還請求ができます。
なので、残りのおむすびは手元を離れて占有権はないし、所有権を破棄しているといえるので、おむすびは誰のものでもありません。
おむすびころりん すっとんとん たくさんありがと とんとんとん
また、歌が聞こえてきました。
「これは面白い。わしも歌うぞ。それ おむすびころりん すっとんとーん
一緒に歌おう とんとんとーん。」
おじいさんは歌いながら踊りだしました。
「うわー、助けてー。」
今度は、おじいさんが穴にすとーんと落ちてしまいました。
おじいさんは、穴の中を、ころりん ころりん ころりん と、転がっていきました。
ドッスーン。おじいさんが落ちたところは、ねずみの国でした。
#ねずみの国に侵入罪?
ねずみの国はねずみの住居。おじいさんに住居侵入罪が成立するか?
・刑法130条 住居侵入等罪
正当な理由がないのに、人の住居もしくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
まずおじいさんには故意がありません。落っこちてしまったわけです。
なので犯罪が成立しません。
ただ、ねずみたちに出ていけと言われてでていかなかったら、不退去罪になるわけですが。
住居侵入罪の保護するものは、住居等を支配、管理する権利、利益であり、住居に誰を立ち入らせるを決める自由です。
おじいさん ころりん すっとんとん ようこそいらっしゃい とんとんとん
ねずみたちが歌っています。
おじいさんはにこにこして言いました。
「ねずみさんたちが歌っていたのか。本当に楽しい歌だねえ。」
「おじいさん、おむすびどうもありがとう。どうかゆっくり休んでいってください。」
「おじいさん、たくさん召し上がってください。」
お膳の上は、珍しいごちそうでいっぱいです。
ねずみの歌と踊りが始まりました。
それはそれはおもしろい踊りでした。
「ああ 楽しかった。すっかりごちそうになってしまったな。そろそろ家に帰るとしよう。」
おじいさんが帰ろうとすると、ねずみたちが箱を持ってきました。
「おじいさん、おみやげです。」
「これはどうもありがとう。」
とても重い箱でした。
おじいさんはよいこらしょと箱を持って家に帰りました。
おじいさんが箱のふたを開けると、どうでしょう。
お金がいっぱい入っていました。
「おばあさんのおむすびがとてもおいしかったから、ねずみさんたちがお礼にくれたんだよ。」
「そうですか、よかったですね。」
おじいさんとおばあさんはとてもうれしそうでした。
おしまい
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